インタビュー 吉川翔子
CrossOver法律事務所は、新興企業の企業価値の永続的向上を支え、真に付加価値のある業務を提供するプロフェッショナルファームでありたいと考えています。プロフェッショナルファームとしての当事務所の姿勢に興味を持たれた方は、是非ご連絡ください。(カジュアル面談も受け付けています。)
PROFILE
吉川 翔子(弁護士・ニューヨーク州弁護士)
2006年京都大学法学部卒業、08年京都大学法科大学院修了。2009-21年長島・大野・常松法律事務所。2018年University of Virginia School of Law(LL.M.)卒業。また、同事務所在籍時に株式会社リコーやLINE株式会社、経済産業省へ出向。21年にCrossOver法律事務参画。
「仕事か家庭か」ではない新しい選択肢
新卒で入所した長島・大野・常松法律事務所在籍時には、リコーやLINEへの出向、米国留学、経済産業省への出向など、弁護士として以外にも多様な経験を積んでいますね。まずは企業への出向時代の話を聞かせてください。
吉川翔子弁護士(以下、吉川):1人目の子どもの育休が明けるタイミングで、事務所に戻っても保育園のお迎えに間に合うような帰宅時間にしようとすると案件になかなか入りづらく、柔軟な働き方を提示していただいたリコーに出向することになりました。リコーに1年弱出向した後、一度は事務所に復帰しましたが、やはり子育てしながら大きな案件にはなかなか入れない状態が続きました。そのような中、LINEが知財に詳しく、会社に物理的に常駐できる弁護士を探していたこともあって、その条件に当てはまって、子育てにも時間を割きたかった私が出向することになりました。そこでは、LINEミュージック・LINEバイトなど新規事業の立ち上げに関する法務などをほぼ一人で対応していました。
その後、米国に留学していますね。小さいお子さんが2人いて、留学に行くのは大変ではなかったですか?
吉川:大変ではありましたが、娘を二人産んで、「娘たちを何かを諦めた理由にしたくない」という思いが強まりました。将来、「お母さんは留学のチャンスがあったけど、あなたたちがいたからね」なんて絶対に言いたくない。そしてそんな私を見て、娘たちが「お母さんになるということは自分の夢を諦めなければならないんだ」と思うなんて絶対に嫌でした。同期の女性弁護士には、自身のキャリアを中断して配偶者の留学に帯同したり、配偶者が同行できないから留学しないと決めた人もいます。でも、男性と同じように努力して頑張ってきたのに、男性は迷わず留学に行き、女性は夢が閉じられてしまうのは、すごくもったいないなと感じます。
私は娘たちに、子供というのは親の原動力にはなっても障害になることはないと示したかったし、娘の時代には働き方やキャリアを自由に選べる時代にしたいと考えるようになりました。だから、私は娘たちに身をもって「子どもを2人産んでも海外で勉強して資格を取れるんだ」と証明したいと強く思い、娘たちにもその姿を見て欲しかったので、家族で渡米することを決めました。
娘さんたちはそんなお母さんの背中を見てなんと言っていますか?
吉川:弁護士になりたいとは一ミリも言いませんが(笑)、褒めてくれますし、尊敬してくれているようです。でもそれ以上に嬉しいことは、結婚して子どもがいても働いている前提で将来どんな仕事に就きたいかを娘たちが話してくれることです。「女性だから」「母親だから」で何かを諦めてほしくないので、彼女たちの中で「母親になったからには自分の夢は我慢するもの」という考えがないことがうれしいです。もちろん、将来的に、娘たちが家庭に入る選択をしたのなら、それも応援したいです。どんな選択も本人がやりたいことであれば歓迎ですから。
日本の女性弁護士のキャリアは、家族ができると選択肢が狭まる印象があります。
吉川:特にビジネスロイヤーの世界では女性弁護士は家庭や子どもをもつと、子育てを優先して何をしたいかではなく何ならできるかという観点から仕事を選ぶか、仕事を取って子育てへの参加割合を減らすか、といった偏った選択肢しかなく、両立を許容する事務所の選択肢が少ないと感じます。また、家庭も仕事も両方諦めない女性弁護士のロールモデルが少ないことも問題だと考えています。私は「仕事か家庭か」という両極端な選択肢ではなく、真ん中を選びたい。「真ん中」という選択肢がなければ自分で作ればいいじゃないと思って、このスタイルを貫いています。子供にたくさん関わって子育てしたいという感情も子育て期間中もキャリアアップしていきたいという感情もどちらも大切にしたいと思っています。
過去には特にビジネスローの世界では女性弁護士が就職するのも大変だった時代があったと聞きますし、入所しても子どもをもつことを良く思われなかったり、許容されたとしても祖父母による子育ての完全サポートが受けられることが事実上の条件だったりした時代もあったそうです。そういった中で先輩女性弁護士が頑張ってきたから今の女性弁護士は子供を持つこと自体を迷う必要がなくなったと思います。先輩女性弁護士の頑張りの恩恵を私は受けています。だから私自身も、自分の娘の世代が少しでも今より生きやすい時代になるように、自分自身で現状を良くしたうえで次の世代にバトンを渡したいという思いがすごく強くあるんです。
これは女性のためだけではなく、男性のためにもなると信じています。女性が真ん中を選べば、伴侶も真ん中という選択肢が出てきます。共働きの多い時代、子育てや介護といった家族の話は男性の問題でもあるはずです。もっと言えば、「趣味を仕事と同じくらい大事にしたいから真ん中を選ぶ」という人が出てきても良いと思うんです。生き方の「選択肢を増やす」ということを次の世代のためにやっていきたいですし、真ん中を選びたいけど悩んでいる後輩の相談に乗るという活動も個人的に行っています。もちろん、これは仕事のクオリティとは別の話です。クオリティはどの道を選んでも下げていい理由にはなりません。私生活を大事にして仕事はそこそこにしようという話ではなく、プロとして最高のクオリティのものをクライアントに提供するのは当然の前提として、仕事に24時間フルコミットすることが高いクオリティを出すための方法というところを変えていきたいと思っています。
自分らしい働き方を叶える場所
留学後に経産省へ出向し、出向が終わるタイミングでCrossOver法律事務所に参画していますが、事務所移籍を決めた理由は?
吉川:子育てもしっかりとやりたかった私にとって、いつでも対応できる状態を求められる大手法律事務所で働き続けるのは難しいと思っていました。今を除くと、LINE時代が一番楽しかったこともあり、インハウスへの転職を考えていました。
そんな中でCrossOverを立ち上げた同期の尾下弁護士から一緒にやらないかと声をかけられました。始めは勤務時間がしっかり決まっているインハウスの方が働きやすいことから断ったのですが、インハウスの面接を複数受けて見えてきた懸念点もありました。例えば、向こう5年はすごく楽しく働けるかもしれないけど、10年いた時に、自分が「楽しい」と思えるか、満足できるのか、という点で確信が持てなかったんです。長年会社にいれば管理職になっていきますが、果たして管理職としての仕事が自分の本当にやりたいことなのかと聞かれると、わからない。逆に、ずっと平社員でいることとなった時にそれも自分の望む形なのかも自信が持てない。そのような迷いの中で「キャリアアップはしたいけれども、私にとって子育ては非常に重要だから、絶対に夕食は子どもと一緒に食べたい。夜も働くのが当たり前の環境ではやれない。」と率直に尾下弁護士に話したら、彼は、「仕事に夢中になる人がいてもいいし、家族を大事にしたい人がいてもいい。多様な人の居場所がある事務所にしたい」と言ってくれて、この事務所だったら楽しそうだし、10年後も辞めたいと思わないなと確信し、参画を決めました。
弁護士としてどういう仕事をしたいですか?
吉川:インハウスが増え、AIが賢くなっている中で、法律書を読んで「こう書いてあります」と答えるだけでは、外部弁護士の価値はほぼなくなります。そこからもう1歩・2歩踏み込んだアドバイス、法律に留まらない総合力を駆使したアドバイスなど、より高い付加価値を提供することが「外部の弁護士」には求められていると思います。「あの人と話していなかったら会社の命運が大きく変わっていたよね。」と言われるような仕事がしたいですね。
CrossOverで働くと、そうしたスキルは養われますか?
吉川:まさにこの事務所の名前である「CrossOver」に込められた思いとも通ずるところですが、1人で経験をクロスオーバーさせることもあれば、他者の経験とクロスオーバーさせることで、自分の力を高めることができると感じます。
インハウスや役所での経験、もっと言えば子育ての経験など、私のこれまでの人生の全てを活かせています。他方で、「いろんな経験をしていなければダメなのか」というとそうではありません。例えば、私は東証に出向したことはありませんが、尾下弁護士と議論したり、顧問の方々や外部専門家の方々と話すことによって、東証の物の考え方をよく理解できるようになりました。自分が直接体験しなくても、他者の経験と自分をクロスオーバーさせることで、自分の中に知見として溜まっていくんです。この事務所は“クロスオーバーさせること”をとても大切にしているなと感じます。
CrossOverはどんな事務所ですか?
吉川:クライアントへ提供するアウトプットの価値を中心に置き、それを高めることが好きな人たちが集まる事務所だと思います。
今はAIに聞けばそれなりの答えが返ってくる時代です。その一方で弁護士の数は増えていて、「弁護士の価値」の低下が不可避な中で、「自分たちの価値を残す」ということを真剣に考えている事務所だと思います。
また、所内のカルチャーという観点では、若手でもベテランでも、弁護士一人ひとりを軽んじることなく、対等な立場として議論する事務所です。だからこそ、アソシエイトの育成も全員が真剣に考えています。
採用方針や若手の育成方法は?
吉川:採用段階におけるミスマッチは双方にとって不幸なので、何度も面接や会食を実施して、互いに相性を確かめます。外部弁護士という立場から、あらゆる知見・経験を総動員して最高のアウトプットを提供することが楽しいと思える人と働きたいですね。また、「真ん中」の選択肢を選びたい人にとって居場所になる事務所でありたいです。
若手の育成については模索中ではありますが、OJTが基本です。特に「議論すること」に重きをおいているので、オンラインではなく、「顔を見て話す」ということを大切にしています。
CrossOverは2024年10月に5周年を迎えましたが、次の5年、どうしていきたいですか?
吉川:事務所の風土を大事にしたまま、「クライアントのために最高のアウトプットを出せているか」という自問自答を常にし続ける事務所でありたいです。
CrossOver法律事務所は、新興企業の企業価値の永続的向上を支え、真に付加価値のある業務を提供するプロフェッショナルファームでありたいと考えています。プロフェッショナルファームとしての当事務所の姿勢に興味を持たれた方は、是非ご連絡ください。(カジュアル面談も受け付けています。)
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